名古屋市の自転車専用レーンとヘルメットの着用率を調べてきました。

国道22号線の自転車専用レーンの視察・調査 自転車の安全利用

視察、というほどではありませんが、以前「ヘルメットの着用努力義務」をお題にした投稿の中で、名古屋市内を抜ける国道22号線に敷設された普通自転車専用通行帯いわゆる「自転車専用レーン」のことにも触れました。あれ以来、モヤモヤがどうしても晴れません。そこで、一度腰をすえて調べてみることにしました。

場所は、名古屋市西区の浅間町交差点の西あたりです。Googleマップで示すと次の区間となります。交差点には名古屋市営地下鉄「浅間町駅」があり、比較的都心にちかいエリアです。

車線を転用した自動車専用レーンと歩道の関係

この国道22号線はもともと片側5車線からなる大きな道で、そのうちの路側帯と歩道にいちばんちかい車線が転用され自転車専用レーンになっています。また、車道との区切りには金属製のパイプ柵が設置され安全にも配慮されています。国道の車線幅はだいたい3~3.5 mで作られていますので、この自転車専用レーンもまさしく同じだけの横幅が確保されています。

上の画像が実際のレーンです。午後1時半ごろに撮影しました。よく見ると、レーンより幅の広い歩道が目に止まります。画像のようにレーンを走行する自転車の姿も捉えています。しかし、ヘルメット着用率調査と同時にカウントしていたところ、その半数以上は歩道を通行していました。実はこのレーンは、途中いったん途切れますがこのまま名古屋法務局前まで繋がっていきます。しかも、いずれも幅の広い歩道をともなってです。

自転車が歩道を走行・通行することの道路交通法上の根拠

たしかにやむを得ない状況下での自転車の歩道走行は道路交通法上でも条件付きで許されています。警視庁の自転車の交通ルールから引用してご紹介します。

歩道(普通自転車が通行可能な場合)
普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(普通自転車通行指定部分)がない場合
相互通行可能ですが、中央から車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。

(罰則)2万円以下の罰金又は科料

警視庁:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/rule.html

それでは、自転車専用レーンがある場合はどうでしょうか。

普通自転車通行指定部分がある場合
相互通行可能ですが、普通自転車通行指定部分を徐行し、歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。

普通自転車通行指定部分を通行中に歩行者がいない場合は、すぐに徐行に移ることができるような速度で進行することができます。

ただし、普通自転車通行指定部分であっても歩行者が優先です。歩行者がいる場合は徐行し、通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。

(罰則)2万円以下の罰金又は科料

警視庁:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/rule.html

やはり条件付きの許可となっています。そんな中、5/20に「名古屋のど真ん中「1車線を自転車レーンにします」社会実験へ 丸の内の国道22号」という見出しのニュースがYahoo!で配信されました。

名古屋のど真ん中「1車線を自転車レーンにします」社会実験へ 丸の内の国道22号(乗りものニュース) - Yahoo!ニュース
国土交通省 名古屋国道事務所は2023年5月17日(水)、名古屋市中区の国道22号で、片側4車線のうちの1車線ずつをバリケードで封鎖し、自転車レーンとする社会実験を行うと発表しました。

今後も自転車専用レーンは伸延されていく計画ということですが、社会実験としてはかなり思い切ったものだというのが実感です。

今回のリサーチポイントは、西の押切交差点までの2車線からいっきに4車線に膨らむところです。画像からもわかるとおり、もともとは5車線の道でした。こうした余裕のあるケースでなら、クルマのスピード抑制対策に繋がると考えることができます。ただ、すべての道路がそうであるとは限らないため、車道をあまり削りすぎると渋滞の原因につながるのでは?という素朴な疑問を感じますが、この点のついてはの各種データをぜひ今後調べていきたいと思います。

名古屋市内でヘルメット着用率をリサーチした結果

調査の対象は50台です。50台見るまで帰らないと決めて観察していました。結果から申し上げるとヘルメット着用率は0%でした。世代も性別も問わず、です。電動アシスト自転車(電アシ)はあいにく見かけませんでした。

個人的に、電アシのかたや自転車チャイルドシートでお子さんを乗せているかたのヘルメット着用率は高いイメージがあります。今回の調査は、平日の午後の早い時間帯でしたが通勤、通学ともなればまた結果は変わってくるのかもしれません。

いろいろ予想外の結果に、わたし自身がいちばんびっくりしています。稲沢市内でのヘルメット装着率はかなり高いと思うのですが、はたしてこの名古屋市の状態との違いはどう説明できるのでしょうか。もしかするとヘルメットの購入補助に絡んでいるのかもしれません。名古屋市にも取組みはあるのですが、わたしたちの稲沢市は昨年度よりすでに取り組んでいた…、いえ、同じ愛知県施策なので名古屋市がおいてけぼりということはないはずです。

名古屋市:自転車乗車用ヘルメットの購入を補助します(暮らしの情報)

これは追記ですが、いったん当記事を公開後「これは中学校からの自転車通学が大きな影響を及ぼしているんだ」と気付きました。

名古屋市内の中学校には、わたしの知る限りですが自転車通学許可はありません。だからこそ、ヘルメット着用の意識が育っていないのです。土台となる仕組みが明らかに違います。それは文化でも政治でも教育でもありません。なんと形容したら良いのでしょうか。地方の過疎化や少子化が叫ばれていますが、一方で今回のような自転車ヘルメット着用義務などその特性にあわせた制度的な進歩やルールづくりは都市部よりむしろ先進的であるといえます。

今後、折に触れて稲沢市内の自転車ヘルメット着用率もリサーチしていきます。定点観測とはならないいかもしれません。