稲沢市で備えるべき南海トラフ巨大地震対策の本命は液状化現象による二次災害です。その2

木曽川の河畔砂丘

前回投稿の”その1”では、液状化現象とはいったい何かについて触れました。

主に砂が堆積した地中が巨大地震の振動により刺激を受け、水分と一体化して安定した層がいっきに不安定になることで、地盤沈下や泥が道路に噴出したりする現象です。近年の建築物の耐震基準により、たとえ巨大地震で建物の倒壊を免れても水道やガスなどのインフラ破損から道路交通への影響、そして、最悪は家そのものが傾いたり沈下したりと、被災後の回復に影響を及ばす大きな二次災害として降り掛かってきます。

その2となる今回から、いま一度稲沢市の地盤について考察を深めるとともに、この恐ろしい液状化現象へのできるかぎりの対策を考えていきます。

古地図や祖父江砂丘の存在から考察する地層の状態

当然のことながら、家や道路は土地の表面に作られています。そして、液状化現象を考えるためにはその土地がどういう成り立ちをしているのか、歴史的経緯をさぐるのがもっとも手っ取り早い方法です。

まず手始めに表層20~30cmあたりの地層を考えていきましょう。今回、科学技術振興機構(JST)が運営する電子ジャーナルプラットフォームJ-STAGEで公開されている、1977年執筆の森山昭雄氏の地理学評論「木曽川平野表層堆積物の粒度組成(PDFリンク)」から以下、引用させていただきます。次の図は1970年頃のおそらく馬飼大橋(魔界頭首工)が建設されるあたりで調査された表層堆積物のサンプリング図です。古地図と考えてもじゅうぶんおもしろいデータです。

古い論文であり判別しづらいですが、たしかに英語で「MAKAI(馬飼)」「SOBUE(祖父江)」「INAZAWA(稲沢)」などが確認できます。

この論文は地質調査ではなく、その表層の構成物の粒子についての考察が主な目的であり、たしかに液状化現象を考えるにあたって大事なことではありますが、あまりにも専門的すぎるのでこの図を作成するにあたっての初期考察の部分を抜粋引用させていただきます。

泥質成分を多く含む扇状地表層堆積層(IF)、自然堤防堆積物(KN)、後背湿地堆積物(KB)(以下一 括して泥質堆積物と呼ぶ)は、全体として著しく細粒である。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/50/2/50_2_71/_pdf

では、その表層のさらに下、いわゆる岩盤までの状態はいかがなものなのでしょうか?その3以降で触れていきます。