NTTがはじめる詐欺電話無償対策から思うユニバーサルサービスの本来目的

ユニバーサルサービス

なぜ携帯電話・スマートフォンでは番号が無料で勝手に出てるのに、固定電話では有料サービスのままなんだろうと以前から不思議でした。各家庭に引き込まれる電話線もほぼ光化が完了しており、下地はじゅうぶんできていたはずです。

先日、東西NTTからの発表があり、70歳以上の高齢者がみえる世帯を対象にこれまで月額440円で提供していた「ナンバーディスプレー」と、非通知番号からの着信にはかけ直しを自動応答する月額220円の「ナンバー・リクエスト」について、初期工事費も含め無料化することがNTTより発表されました。申込みは、令和5年の5月1日からとのことです。くわしくは以下のリンクから。

NTT西日本:特殊詐欺犯罪の防止に向けた取り組みについて(2023年3月22日)
https://www.ntt-west.co.jp/news/2303/230322a.html

また、「特殊詐欺対策サービスの無償化」も同時に発表されました。ただしこちらは申込み先着順で絞るようですね。5,000件ですか。番号表示などの一連の機能だけではなく「通話解析」よ呼ばれるAIでのサービスもついてくるようです。NTTの管理する専用クラウドに通話の録音データを直接送り、その内容をAIが瞬時に分析することで、万が一詐欺の疑いがあった場合は本人や親族らにメールか電話で通知が届くという仕組みとのこと。

さて、NTTは2000年代初頭をはさみISDN(アイエスディーエヌ)と呼ばれるデジタルの電話回線を懸命に敷設しています。今思えば、光と比較してとても陳腐なものですが、実はまだ国内には残っています。今のスマートフォンのギガを使い切った速度200Kbpsよりさらに1/3~1/4程度の速度しか出ない回線です。このあたりの歴史をリアルタイムで体験したことが、今となっては回線速度にいちいち文句をつけないという教訓になっています。ちょっとくらい表示が遅くても、じぃ~っと待てます。あんまり長くかかるときは仕事柄さすがに障害発生を疑いますが。

実は、そのISDNの頃にも番号表示のサービスは行われていました。TA(ターミナルアダプタ)と呼ばれる装置が回線と電話機の間に入るのですが、ナンバーディスプレイ契約がなくても発信元の電話番号がそのTAの液晶窓の表示で確認することができたものです(すべてのTAではありませんが)。

どうして、この点にに触れるのか。実は今の光回線でも「光回線終端装置」と呼ばれるONUでISDNと同じことができているからです。かんたんにいえば、光全盛期にあって、発信元の電話番号はすでに着信した家庭内まで届いているのに、なぜか表示をしていないのです。設備上の都合などいろいろな理由が各所で考察されていますし、今現在NTTが民間であることを考えれば道理も通りそうな気はしますが。

ただ、詐欺対策そのものは被害が延々と続いており、手口も巧妙になってきました。知らない番号は着信しない、それだけで守られた被害も多いかと思います。

ところで、ユニバーサルサービス料というものをご存知でしょうか。スマートフォンの契約では1回線ごとに現在3円ずつ徴収されています。どこの会社の回線であろうとです。このお金のわかりやすい使い道は、過疎地といえども放っておかず全国あまねく均等な質のサービスを提供する、通信インフラの整備に使われています。税金の一種と考えればわかりやすいはず。電気料金もこの考えで運用されていますね。

このユニバーサルサービス料、たしかNTTのもとへ集まるはずですが、こうした被害対策へは活用できないものなのでしょうか。すでに実現している番号表示機能を有料を建前に意図的にロックしています。しかし、電話回線そのものは公共のインフラであり国策事業のひとつなので、総じて民意は反映させなければなりません。

なんの事情があって、すでにある技術を出し惜しみするのか。
経済こそ「経世済民」に基づくものなのにどうして守ろうとしていないのか。
そして、消失した電話加入権。
そんな不可解なことがこの日本には多すぎます。